野菜ソムリエノート

今、生活者としてできること

3011年3月11日に起きた東日本大震災。これにより多くの犠牲者が出ただけでなく、農地も失われました。しかし今、その直接の損害だけでなく、原発の問題が発生し、それによる放射能汚染の風評被害という二次災害が起きてしまっています。
私は野菜ソムリエの資格を持ってはいるものの、生産者ではなく生活者です。この立場でできること、またプラスアルファとして野菜ソムリエとしてやっていきたいことをこの数週間考え実行してきました。そんな折、野菜ソムリエ協会の食と野菜ソムリエの日チャリティセミナー「今こそ考える日本の農業」に参加してきました。そこで改めて知ったことなどをレポートしたいと思います。(2011.4.17)

チャリティセミナー「今こそ考える日本の農業」

4月9日の食の日にちなみ、緊急に開催されたチャリティーセミナーで、この受講料は寄付されるそうです。
講師は中村敏樹先生。
生産・流通の指導、産地開拓や商品開発のアドバイスなどを幅広く行っている、野菜ソムリエ講座の講師でもある先生です。
広い会議室はほ満席になるほどで、野菜ソムリエたちの関心も高いテーマでもあるなと感じました。チャリティにもなるし、興味深いお話も聞けそうと私も期待して参加しました。

農地が受けている被害

千葉県旭市の事例が紹介されました。こちらは全国有数の野菜の産地。
その農地が、地割れや液状化が起きたり、津波による塩害が発生したりと荒れてしまっているそうです。
停電で暖房が停止してしまうのも、ハウス栽培にとっては大打撃。例えばトマトは8℃以下で花粉が死んでしまうので、受粉が出来なくなっている状態だそうです。

福島や茨城はこれからちょうど稲作や夏の野菜を作付けし始める時期。
なのにその作業に取り掛かれない可能性がでてきています。

風評被害の実例

福島第一原子力発電所から放射性物質が流出したとされることから、福島に近いこちらでも主に葉物野菜の出荷停止や自粛などが取りざたされたため、それ以外の野菜含めて危険であるという風評被害に晒されています。
例えば築地市場に出荷された旭市産シュンギクが暫定基準を超えたことを受け、東京中央卸売市場から旭市産の全ての出荷品目が受け入れ拒否されてしまったそうです。
卸売市場法に違反する事例です。
これを聞いて、つい先日も茨城県沖で漁獲した水産物の受け取りを銚子市漁協が拒否したというニュースを思い出し、農産物だけでなく様々なところで違反が起きてるのだなあと思いました。

これは卸売業者だけが悪いのでしょうか?
そうではないですよね。
元はといえば、消費者が「なんだか怖いから食べたくない」という気持ちになり、原発の近くの農産物を買わないようになってしまった、八百屋さんとしては敬遠されて売れないから仕入れなくなる、仲卸業者さんはだったら取り扱わないでおいた方がよっぽどいい、という流れになっているからにほかなりません。

安全を過剰に捉えすぎた消費者心理によって、大田市場では野菜の取り扱いが半分に減っているにもかかわらず、価格も下落傾向にあるそうです。
完全に負のスパイラルに陥ってしまっています。

4月でいったん終わるといわれている計画停電も、スーパーや飲食店などが青果物を仕入れ、保存する冷蔵庫が使えなくなるのを恐れて仕入れを控えたりするケースに繋がっているようです。

危惧されること

●食糧自給率の低下
福島も茨城も農産物の大きな生産地。これらの野菜が生産・流通しないとなると、輸入野菜が増え、食糧自給率がますます低下する恐れがあります。
菅総理は昨秋、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加表明をしました。経済産業省はその方が経済のためにいいんじゃない?ととても楽観的でしたが、農林水産省は他国から安い農産物が多く入ってくるため多くの農家が農業を辞めてしまうのではないか、と危機感を持っています。

私も農水省の見方に賛成です。ただでさえ、大変な労働を強いられ、不安定な収入、後継者不足と現在でも問題は山積しているのに。

外国産は拒否!という訳ではなく、その国の名産品だったらそれはそれで楽しむことはします。
でもまずは自給率を上げることをこの機会に進めていくべきでは、と思います。

●経済活動の低下
これも二次災害といってよいでしょう。
被災地ではあんなに大変な思いをしているのに、無事である自分達は飲食してもいいのだろうかという自責の念に駆られたりする人も増え、外食産業が大打撃を受けているのはみなさんもご存知の通りだと思います。
実際に、今後半年間で相当数の店舗が閉店に追い込まれるだろうというマーケティングの方の見通しもあります。
幸いに無事な私達は、野菜・果物を購入し経済活動をまわしていかないといけません。
復興支援の形も色々ですが、最近では東北の酒蔵の方たちがYouTubeで、花見の自粛をせずにむしろ東北のお酒を飲んでくださいとメッセージを流していました。
そういった直接東北産のものを積極的に消費することも大事です。

●野菜不足による健康被害
放射性物質による健康被害が怖いから、暫定基準値を超えていない野菜までも食べないという人が、野菜不足により健康被害がでてくるのではないか、という私もすこぶる単純な懸念です。

などなど、他にもあるでしょうがこんなところで。


これからどう支援していくか

人により様々な立場ややり方がありますが、一生活者としては、普段どおりの消費に尽きると思っています。

もし、余裕があれば、プラスアルファ意識して東北の商品を購入することをお勧めしたいです。

私も実践しています。
●福島のお酒で晩酌
●茨城の野菜でサラダ

おいしく、しかも旬の栄養もしっかり摂りながら、被災地・風評被害地域への応援を続けて行きますよ。

このセミナーを受けた頃からニュースでもよく聞かれるようになったのは、風評被害の大きい福島や茨城の農産物を東京で販売するイベントが増えてきたこと。
しかも、どこも大盛況で完売だというお話。
実際私も新橋のSL広場でのイベントに仕事が終わって駆けつけましたが、すでに完売して片付けられた後でした。
でも、応援して購入しようという人々が多くてよかったなあと嬉しくなりました。

最後に

野菜ソムリエの講座を受けたことで、情報を冷静に判断して捉える訓練はできていたかなと思います。
ただ、今は誰も経験したことの無い事態になっているので、注意して様々な機関から発表されるデータなども確認していく所存です。

野菜と果物をもっと勉強する野菜ソムリエ講座の情報はこちらから。

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